事業を生業とする企業にとって、一見、研究活動はその対局に存在するように思えます。しかし、アートラボにとって、研究活動こそがその存在証明の根幹と言っても過言ではありません。
アートラボは、その事業が美術である特殊性から鑑み、事業活動と研究活動を一衣帯水なものととらえています。売買、鑑定、保管、修復など、美術品を取り扱う為には、学術的な観点が不可欠です。世界の伝統あるオークション会社などが、研究者と同等のレベルの専門家を擁し、常にその専門性を追求しているのも、そうした観点からです。
研究という世界は細分化とほぼ同義です。美術研究と一口に言っても、その領域は大きく美術史学、美学に二分されます。アートラボが研究領域にしているのは、主に美術史学からのアプローチです。無論、美術史学の研究と言えども、人文系の研究領域が多岐に細分化された現在、それは高度化され、美術史学研究も裾野が広がり、美術史学にも美学のみならず、社会学、文化人類学的な領域も内包されています。また、今日では美術の対象領域も、絵画、彫刻、 建築、工芸という、いわゆる美術だけでなく、広告デザイン、アニメ、漫画、メディア・アートにまで広がっています。アートラボは、美術史学を軸として、アートをできるだけ広範にとらえていくことを目指しています。
しかしながら、経済偏重の時代性と、昨今の世界経済の不確定性は、企業体が営利を呼ばない美術研究を行うことをより困難としています。その意味で、今後、アートラボも協力各所と連携を図りながら、企業が非営利な研究活動をより推進できるよう、主要官庁により要望していくことが課題のひとつだと考えています。
どのような時代にあっても、アートラボは、美術を事業とするかぎりにおいて、自らの研究という一翼を捨てることはありません。研究を土台としない美術事業は、いかなる事業であっても、事業として成立するのみで、美術としての意義は無であると言わざるを得ません。
美術における事業と研究の止揚。それを理念として、アートラボは研究活動にも努めています。

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